マクリーンが、金銭的には恵まれなかったプレスティッジからブルーノートへ移籍したのは、1958年のことでした。マクリーン独特の泣き節と音色が魅力的だったプレスティッジに加えて、若干の変化をブルーノートで加えていきました。そんな作品として、ここでは「New Soil」をかつてここで取上げました。
今日取上げる作品は、マクリーンが大転換を図った作品です。ウォルター・デイヴィス(p),ハービー・ルイス(b),ビリー・ヒギンズ(d)との録音です。
この時期迄では、アルバム全てをワン・ホーン・クァルテットで演奏しているマクリーンの録音は、決して多いものではありません。
1987年に国内盤で買ったこのCDには、和田政幸氏が訳したマクリーン自身が書いたライナー・ノーツが掲載されています。
先ず一般論としてマクリーンは、「ミュージュシャンはある一定のセンまで達すると、独自の表現方法を求めて始める」と書いております。その上でこの作品が録音された時代を、「近年、ホーンにおけるエモーションは、新たな重要性を帯びてきている」としております。
マクリーン自身がそれを模索していく中で、オーネット・コールマンの影響を認めております。「世間から非難を受けながら、オーネットは少しも自分の主張、すなわちジャズに於ける表現の自由、について一歩も譲らなかった」と書いております。
また、ミンガスからの言葉も、マクリーンにとって強い影響があったようです。「ジャッキー、お前さんは確かに、お前さん独自のサウンドがある。だったら、今度は自分独自のアイデアをみつけて来なきゃいけないよ」という、ミンガスからの言葉は、マクリーンにとって貴重なアドバイスだったとのことです。
独自の表現を、新たなるエモーションの世界を展開させることに求めたマクリーンの魂が、この作品にあります。6歳の娘のためにマクリーンが書いた『melody for melonae』でのエモーショナルな展開は、ジャズの名場面の一つと言えるでしょう。