いきなりサイド・マンの話になりますが、トランペットのトム・ハレルが参加している作品であります。僕が知っている彼の演奏は、1970年代後半から1980年代にかけてのものであり、元気の良い演奏が印象的でした。しかし彼は1990年代に入ると、健康面で問題を抱え、演奏のデキにかなりのバラつきが出てきているようです。まさにそんな不安定な時代のハレルが参加している作品を、今日は取上げます。
リーダーはベース奏者のジョリス・ティーぺ。1994年から8枚のリーダー作を残している方で、この「Bottom Line」は2作目のもの。Don Braden(ts,ss),Darrell Grant(p),Carl Allen(d)が参加してのクィンテット編成。また1曲だけトロンボーンの Noah Bless が参加しております。
綺麗な都会の雰囲気のジャズでありますが、絵葉書のような都会さしか感じない内容であります。その中にあっては、ジョリス・ティーぺのアレンジが楽しめた、ゴルソン作の『whisper not』とエリントン作の『don't get around much anymore』が、救いと言えるでしょう。またハレルは全く目だっておらず、透明な音色を聴かせるドン・ブレイデンが活躍しておりました。