クラーク=ボラン・ビッグ・バンドがMPS/SABAに残した作品は、一昨年にCD化されました。このコーナーでも、「All Smiles」,「Fellini 712」,そして「More Smiles」と3枚取上げました。恐らくこのCD化での売れ行きが好調だったのでしょう。日本で販売権を持っているユニバーサルが、昨年中盤に先の3枚を含む5枚を、紙ジャケで発売したのです。
国内盤ですので日本語解説があり、岡村融さんの解説で、このバンドのバックグランドを知ることが出来ました。
1961年から1972年まで活動したこのバンドのオーナーは、ジジ・カンビという人だそうだ。20枚を超える作品を残している人気バンドなのにオーナーがいるというのは、やはりビッグ・バンド維持には金が掛かるということなのでしょうかね。さてこのジジ・カンビは、資産家で、興行師その他の分野の大物とのこと。これから推測するのは誰でも同じでしょう、筋者。
さてこのジジ、ある時にクラーク,ボラン,そしてジミー・ウーディからなるトリオの演奏を聴いて、もっと大きくしたら面白いと閃いたそうだ。フランスジャズ界で顔を利かせていたクラークと、地味な存在であったが作曲と編曲に優れた才能を持つピアニストのボランの二人をリーダーにした、ビッグ・バンドが誕生したのです。
こんな風にして誕生したこのバンドですが、欧州で活躍する有名どころのミュージュシャンが立ち代り参加していました。ビッグ・バンドですので、ソロを得られない有名どころもいたのです。しかし苦情は無し。これは、ボランの人柄によるものらしいと、今日取上げる『Sax No End』に参加したエディ・ロックジョウ・デイビスが述べていました。
キャッチーなメロディを、サックスを中心にぶ厚いサウンドで聴かせ、自然に乗って聴いてしまう作品です。『ニュー・サックス』と『ザ・ターク』の一瞬で惹きつけられる魅力が、印象的でした。
それと共に、この『ニュー・サックス』では、もう一人ドラムを叩いている人がいます。イギリス・ジャズ界の名手ケニー・クレアです。クレアが目立つ叩き方で、クラークが堅実なバッキングの、ツイン・ドラム。1970年代のロック界では良く見られたツィン・ドラムというフォーマットは、この作品がモデルなのでしょうか。