このマレイのクァルテットでのヴィレッジ・ヴァンガードでのライブ盤は、録音から6年経った2001年に発売されたものです。参加メンバーは、マレイとの共演は初めての3人であります。前年からマレイは、それまでとは違ったミュージュシャンと共演しており、この年の夏に数日間行われたであろうヴァンガードでのライブも、新たな刺激を求めていたのかもしれません。
収録曲はマレイにとってはお馴染みのものばかりで、3度目の録音が3曲,そして7度目の演奏の曲もあります。その中の『Acoustic Octo Funk』は3度目の録音なのですが、最初にこれを取り上げたのが、1993年ドイツでライブ録音されたトリオ編成のものでした。アルバムのタイトルは、「Live'93 Acoustic Octfunk」です。そしてこれを発売したのが、日本のサウンドヒルズというレーベルです。今回取上げている作品は、luminaissance という辞書には出てこないスペルのレーベルですが、発売元はサウンドヒルズであります。この辺りに、作品への共通点があるのかもしれません。
軽快なブルース・ナンバーの『Red Car』は、過去2度の録音もクァルテット編成だけあって、ピアノ・トリオをバックにしたマレイは自由奔放に演奏を楽しんでおります。バラッドの『The Desagregation Of Our Children』においても、悲しみをテナー・サックスで静かに穏やかに、しかし怒りを込めて演奏しています。
さてバックに目を向けると、ピアノの Hilton Ruiz の頑張りは認められる内容です。1999年にマレイのバンドで来日していることからも、マレイが認めているのでしょう。ピューレンに通じるところも見受けられる内容です。ところがベースとドラムがいただけない。これは演奏内容というよりは、バランスの悪い録音の問題と言えるでしょう。
このブルースとバラッドの後に続くのが、ファンク調の『Acoustic Octo Funk』ですが、マレイの魂にバックが追いついていない内容です。最後の『Hope / Scope』はマレイの勢いだけで過ぎ去っていくものです。
総じて言えば、マレイがこの作品の発売を本当に承諾したのかが、疑問点に浮かんできます。そう言えばサウンドヒルズからの「Live'93 Acoustic Octfunk」にしても、録音から時期を置いての発売でした。何か裏にありそうな気がします。
またこの「Live at the Village Vanguard」の製作には、お粗末な点があります。5曲目に『obe』がクレジットされていますが、CDには収録されていません。内容的には新しいメンバーとの間合いをライブで探っているマレイの姿を納めた作品と言えますが、収録曲の選択を含めてCD発売側の安易な製作姿勢に疑問符がついてしまいます。