マレイにとって“ザ・ヒル”以来7年振りのトリオ作品で、しかもドイツ でのライブ録音になります。トリオ作品としては実質的に7枚目にあたりますが、ここ暫く遠ざかっていた編成ですね。ベースにマレイのリーダー作で22度目の共演になるフレッド・ ホプキンス、ドラムに5度目の共演になるアンドリュー・シリルが参加しています。演奏曲はマレイにとって何度も演奏してきたのを、選んでいます。レコーディングでは3度目の “calle estrella”、2度目の“joanne's green satin dress”と“Mr.P.C.”、7度目の “flowers for albert”という具合です。新曲は“acoustic octfunk”だけですが、トリオで演奏されるのは驚いたことに、全曲とも初めてです。これは欧州ツァーの一つのライブなのでしょうけど、わざわざ発売するということは、かなりの自信があってのことでしょうね。
7年前のトリオ作品を取上げた際にも述べたことですが、初期の頃の攻撃性から比べて演奏の幅が広がったことを、トリオという編成で強く感じることが出来ます。そんなマレイの演奏と共に、この盤ではホプキンスのベースが絶好調です。特にコルトレーン作の“Mr.P.C.”で、強烈なベース・ラインに乗ってのマレイのソロが圧巻です。また“フラワーズ・フォ・アルバート”の最後のカデンツでのマレイのソロは、このライブをCD化したマレイの自信を感じられます。1曲だけバス・クラで演奏されるこのツァーのために用意されたタイトル曲では、この楽器にかけるマレイの意気 込みが伝わってきますね。大編成でのマレイの作品作りが続いてきたここ数年ですが、このトリオというフォーマットを続けて行って欲しいと思うのは、この盤で熱狂しているドイツのファンだけでなく誰でも思うことでしょう。