この1991年10月、マレイはレコーディングに明け暮れておりました。7日に Red Baron に「Black & Black」、9・10日にDIWにこの作品、12日に Victo に「In Concert」、14・15日に DIW に「Ballads For Bass Clariet」、16・17日に DIW に「Fast Life」、18・19日に DIW に「Death of a Sideman」といった具合です。
ライブ録音が1日あるとはいえ、月の三分の一がレコーディングでした。これはサイド参加ならば別に驚きませんが、、全てがリーダー作品或いはコ・リーダー作品、そして今日取上げている作品はグループの主要メンバーでの録音というように、重要な録音ばかりなのです。またその内容と共演ミュージュシャンも実に多彩なものになっております。マレイにとって1991年は年間を通して精力的に多彩な活動を行っているのですが、そんな年を象徴しているのが、この10月と言えるでしょう。
さて、本盤について触れます。MREの4作目となる作品で、ベースはアリに戻り、ドラムは前作に引き続きロチェスターが担当しております。
迷いを解放し、突き抜ける気持ちを表現した1曲目で、これは『no wave』での成功を再現したもの。爽やかな朝の空が、ちょっとした風で暗雲になり、再び穏やかな空気が漂い始める空間を描いた2曲目。3曲目はマレイ抜きのトリオ演奏であり、4曲目はマレイ抜きストリングス入りの演奏。続く5曲目は、目的が定まった自由奔放な演奏で、これまた『no wave』の再現。マレイのソロと、そこでのドラムの切れ味が光っている6曲目。そして再びマレイ抜きのトリオで演奏される最後の曲。
マレイ抜きの3曲はウルマーの語り口が鋭いものですが、やはりこのユニットにマレイ無しとは、感心しないものになってしまいます。しかし、作品としては完成度が高く、ウルマーのユニットと考えれば、最高の内容になっています。
このMREの活動を振り返ってみると、衝撃的な1作目の『no wave』が1980年の録音。そして長い月日を挟んで、『no wave』の意義を時代に合わせて演奏しようと模索したのが、1988年の2作目と、1990年の3作目。MREとしての可能性を2・3作目での苦闘から見つめ直し、原点を振り返りながら自然体で臨んだのが、この4作目と言えるでしょう。
この1991年以降、このユニットの録音は残されておりません。1作目と4作目の成功によって得たものを、再びこのユニットを通して世に問うのではなく、ウルマーとマレイの個々の活動中で展開しようと決意したのでしょう。