2005年5月27日掲載
Carol Sloane     Live At 30th Street
CBS原盤            1962年8月録音

 キャロル・スローンが円熟味を増した1970年代半ばの、ほぼ自主制作盤に近い作品を去年ここで取上げました。今日はキャロルさんが光り輝いていた時期の作品を取上げます。

 これはCBSのスタジオで行われた、スタジオ・ライブであります。50人を招待したところ、多くの招待客が夫人や友人を連れてきたため、結局200人がスタジオでの観客になったそうです。

 25歳のキャロルさんのライブを支えたバック・メンバーについては、クレジットがありません。日本盤に解説を寄せている山口引滋氏の想像によると、次のメンバーだとか。バリー・ガルブレイス(g),バーニー・レイトン(p),ジョージ・デュヴィビエ(b),そしてウォルター・パーキンス(d)とのことです。

20050527

 派手に決めて「chicago」,ウォーキング・ベースに乗りながらバラッド「love walked in」,気持ちたっぷりに「spring is here」,声の魅力が全開にしてスイングして「taking a chance on love」というように、キャロルさんの素敵な歌が続いていく1枚です。1曲選べと言われても、全12曲からどれを選ぶか悩むほどのデキです。

 彼女の歌の魅力は、ハスキーながらも透明感があり、豊かな声量と適度な音域であります。そして、優しい歌心。小声でしっとりとという内容曲が無かったのですが、これだけの条件が揃った歌手ですから、きっと素敵な出来になるでしょう。

 この時期には「アウト・オブ・ザ・ブルー」という盤もあり、この「30丁目のライブ」と並ぶ内容の盤です。しかしこの盤が日本で紹介されたのは、1975年10月のことでした。この後キャロルさんは、日本で絶大な人気を得ることになります。また本国アメリカにおいては、「アウト・オブ・ザ・ブルー」とこの「30丁目のライブ」は好事家からは高く支持されましたが、この2作以降彼女に目立った活躍がありませんでした。

 ポップス歌手の裁判で有名になった自宅遊園地を連想させる「ネバー・ネバー・ランド」という曲での、キャロルさんの夢見る子供を描く歌を聴きながら、何故10年以上彼女に陽が当たらなかったのかと考え込みました。