「幻の名盤」というものが1970年代に入った日本でブームになったそうだが、このリー・ワイリーの作品もその再発を熱望されていたらしい。恐らくは、「幻の名盤」ブームの支流であったのでしょう。そこで不思議なのは、この作品はRCAというメジャー・レーベルからの作品。通常「幻の名盤」と言えば、倒産した弱小レーベルのもので、その権利関係からなかなか再発出来なかったものと認識していますので、RCAで「幻の名盤」といのが不思議です。
さて大人気のリー・ワイリーの全盛期は1950年代までというのが定説で、特にRCAの2枚は極めつけとか。RCAのもう1枚「 a touch of the blues」をここで取上げた時に、彼女の声の魅力が薄まっており、気が強い女性だと感じると、僕はコメントしました。さて、この盤は如何でしょうかね。
今回聴いた彼女の歌への感想は、感情の表し方が上手い歌手だということ。このことはそのまま、上手い歌手ということになる。テクニックだけの歌手には、本当の意味で上手い歌手とは言えませんからね。
「my ideal」という曲がある。「パリのプレイ・ボーイ」という映画の挿入歌だそうで、1930年のもの。リーの歌からは、夢見る少女の気持ちが伝わってくる。この録音の時に、リーは41歳の誕生日目前。少女の気持ちを嫌味なく表現できるおばさんは、大したものである。