2004年9月26日掲載
Lee Wiley        a touch of the blues
RCA原盤      1956年録音

 1989年に国内盤で買った作品ですが、解説の斉木さんが面白いことを書いております。1960年代に入ってアメリカは粋を忘れてしまった。ジーンズ文化の浸透によって、アメリカ人は華美を忘れた素朴な民族になった。都会調なる賛辞は早晩廃語になるであろう。粋が残っていたアメリカのジャズ歌手が、ダイナ・ショアであり、ペギー・リーであり、このリー・ワイリーなのだ。って具合に書いてある。

 粋なワイリーさんの作品であります。

20040926

 1915年生まれのワイリーさんは、15歳の時にNYに出て、ナイト・クラブで人気を博し、1931年には有名らしいレオ・ライスマン楽団の専属になったのです。しかし、1933年には落馬事故により失明してしまいました。しかし、翌年には何と奇跡的な回復。その後ラジオ番組に登場し、人気を不動のものにしたのでした。多くの歌手がバンドに所属するのに大して、ワイリーさんは単独で活動しておりました。その後も、精力的に独自の活動を続け、1950年に吹き込んだ「ナイト・イン・マンハッタン」は、円熟期を迎えた彼女の傑作と評される作品であります。

 さて、この1956年の作品は、「ナイト・イン・マンハッタン」と比べたら、彼女の歌声に魅力を感じないのです。。しかし、この比較は酷なものでしょう。この作品を聴いて感じた彼女は、気が強い女性だということです。それが歌にプラスに作用しており、「サムデイ・ユール・ビー・ソリー」での哀愁に、恋に強気でいる女性の姿が表れております。また、「ブルース・イン・マイ・ハート」における彼女の歌は、斉木氏が「辛口に歌う姉御肌の表現」と書いてる通りの、良さがあります。その辺の歌手ならば、同じ歌い方が良さにはならないでしょう。

 なかなかの作品です。