先ず、スウェーデンが生んだジャズ・シンガー、モニカ・セッテルンドの簡単経歴を。1937年にハーグフォルスに生まれた彼女の、父親はサックス奏者、母親はベース奏者。自然にジャズを身に付けた彼女は、早くから歌手として活動を始め、1957年には本格的なバンド・シンガーとしてデビューしました。1959年には渡米し、歌手だけではなく映画女優としても活動を始めたとのこと。
次に彼女と日本とのエピソードを一つ紹介します。1965年に東京で国際映画祭が催され、各国からスターが東京に来ました。モニカもその一人として来日したのですが、それはスウェーデン映画界を代表するとしてのもの。当時日本では全く無名だったモニカですが、丁度この年に彼女の名前をジャズ界に刻み込んだビル・エヴァンスとの共演作が発売されました。それを持参したモニカは、パーティで出会った植草勘一氏にその盤を手渡したとか。
日本でこのエヴァンス共演盤が発売されたのは1974年のことであり、この時から日本でモニカの名前が有名になったそうです。植草勘一氏に手渡してからの9年間、日本でこのエヴァンス共演盤は、コレクターが必死で捜し求めていた「幻の名盤」だったそうです。
次に今日取上げる作品について。音源はスウェーデン・コロンビアのもので、1958年から1960年にかけてのもの。1988年にドラゴンから数種のセッションからセレクトした本盤が発売されました。僕は日本で発売したDIWの盤を持っております。
最後に、僕が持っているモニカのCDについて。これと、エヴァンス共演盤、そしてボックスものを持っております。
暖かく可愛らしい歌声のモニカさんですが、流石に二十歳そこそこですので、色気を望むにはまだ時期早々という感じです。意外に声量があり、丁寧に歌っているのが印象的でした。
バックには素晴らしいメンバーが各セッションに用意されていて、それぞれ楽しめる内容です。ドナルド・バード(tp)が楽しめるタイトル曲、ラース・ガリソン(bs)が光っている「get out of town」、アルネ・ドムネラス(as)が聴ける「hallelijah, I just love him so」、そしてベニー・ベイリー(tp)のパンチある演奏の「my heart, my mind, my everything」などが良かったです。