ブッカー・アーヴィン(ts)のこの作品は、恐らくは「cookin'」に続くものでしょう。トミー・タレンタイン(tp),トミ・フラ(p),ジョージ・タッカー(b),ダニー・リッチモンド(d)に加えて、もう一人テナー・サックス奏者が加わってのシクステットでの作品です。
その「もう一人」とは、ズート・シムズであり、意外な感じがするものです。
強烈にブルージーな演奏です。そして驚きは、シムズの演奏までもが強烈にブルージーなこと。このセッションには、何かの魔法が掛けられているかのうようです。思いっ切りブルージーな演奏は、10分を超える演奏のタイトル曲でピークになります。アーヴィン,タレンタイン,シムズ,そしてトミ・フラとソロが続いていきますが、白眉はその後。延々とアーヴィンとシムズのテナー・バトルが繰り広げられます。このテナー・バトルは、かなりの聴きものですよ。
ここまでの4曲のブルージーさに酔った後に用意されているのは、アーヴィンのワン・ホーンでのクァルテット演奏による『largo』です。思い悲しみのアーヴィン節と言ったところ。
ここまでの5曲は全てアーヴィン作の曲ですが、最後に用意されているのは、ロリンズの名演で知られている『poor butterfly』、蝶々夫人です。ここで初めてシムズがシムズらしい演奏をしております。
さて本盤は、ネット通販店DNの注文の数合わせとして、何となく頼んだ作品です。それが大当たり。かなり気に入った作品です。最後に6年前に書いた「cookin'」へのコメントを訂正しましょう。アーヴィンの隠れ名盤として、この作品も加えます。