1999年6月13日掲載
Booker Ervin       cookin’
Savoy原盤        1960年11月録音

 ハイ・スクール時代にトロンボーンを始めたブッカー・アービンがテナーに転向したのは、1953年まで在籍していた空軍バンドの時代でした。その後1958年にNYに進出した彼は、ミンガスのバンドに参加したりと順調な活動をしていました。1960年からは自身のバンドも率いるようになりました。これは、タイトルがマイルスの名盤と同じ事から雑誌等で紹介されることがあるのですが、アービンの代表作は一般的に“ブック・シリーズ”であると言われているから、僕はこれが彼の隠れ代表作だと思います。ピアノにホレス・パーランが参加しているこのクィンテットは、当時“ミントンズ・プレイハウス”のレギュラー・カルテットに、ペットのリチャード・ウィリアムスが参加したものです。久しぶりに、彼の豪快な吹きっぷりを楽しみます。

19990613

 二つの顔を持つアルバムです。一つはアービンのブローイング・テナーを存分に楽しめる、彼のオリジナル4曲です。特に“ミスター・ウィグルス”では、“ミントンズ・プレイハウス”で大受けだったことが理解出来る、ブルージーな曲です。もう一つの顔は、2つのスタンダード曲での、彼の見事な解釈です。“ユー・ドント・ホワット・ラブ・イズ”は、コルトレーンやロリンズなどのテナー奏者の名演が数多く残っている曲なのですが、アービンはこの曲にブルージーな感じを加えて、彼独自の世界を繰り広げています。“枯葉”では、ウィリアムスのミュート・トランペットの後の、アービンのソロが圧巻です。タフ・テ ナーという言葉がピッタリです。全体を通しては、パーランのブロック・コードを多用したピアノが、アルバム全体に深い味わいをもたらしています。