ブラッド・メルドーのピアノは興味を抱かせるものを感じるのだが、これだけ大人気を得ている理由は今一分からない。やはり少々小難しい雰囲気が聴く者をハイブローな気分にさせるのかとも思うが、そう思う自分がまだまだジャズを分かっていないのかとも感じる。
兎に角、来日すればブルーノート東京に長蛇の列が出来、それはNYでも同様のこと。この作品はビレッジ・バンガードでのライブ2枚組であり、このコーナーで取上げるだけでもこのジャズ・クラブでの3作目(1997・1999年)になります。
時に猛烈な勢いで襲い掛かるドラムを、暴走ではなく好演とならしめているのは、メルドーのピアノの懐の深さであろう。しかしその中で、静を意識した演奏である「river man」と「how long has this been going on?」での演奏が、最も興味深いものであった。
この盤は今後、時には酒の共に、時には他の事に思いを巡らせながら聴いていくと思う。普通ならばこんな思いにさせる盤との出会いは嬉しいものなのであるが、相手がメルドーとなると少し違う。彼の作品には、聴くものに常に演奏と対峙させる強烈な緊張感を期待してしまうのだ。
この部分だけが、残念な作品。