1990年代に入って秀作を吹き込んでいるピアニストのケニー・バロンは、言うまでもなく大ベテラン。年言ってから味を出してくる演奏家なのでしょう。ニューヨークにあるクラブでのライブ録音で、ベースにレイ・ドラモンド、ドラムにベン・ライリーが参加しており、渋い選曲で5曲収録されております。
ピアノ・トリオで1曲の平均演奏時間12分は少し長すぎでは御座いませんか、とクレジットを見て思いましたが、これは聴きかたの問題。一音も聴き逃さないなんていうのは、この盤の場合ペケな聴き方。スコッチでも飲みながら雑誌でも眺めて聴くのが、適している作品。そうすると、長々と演奏しているだけのようなユッタリした「blue moon」が、心地よいツマミになってくれるのだよな。気がつくと、グラスの中の液体を喉に流す手を止めて、流暢な演奏に聴き入っているという塩梅。ジャズ・クラブが似合うピアニストなのだと、納得した次第です。