ビ・バップ期の名ピアニストと誰もが認めるアル・ヘイグですが、1950年代半ばからは全く活躍の場所がありませんでした。1960年代に吹き込んだ1枚も、その高い内容にもかかわらず世間の注目は浴びないままでした。1970年代に入りNYのクラブで再び弾き始めたのですが、そんな彼に注目したのはヨーロッパの方々。1973年暮れにパリで演奏した後にロンドンで吹き込んだのが、この作品です。ジルベール・ロヴェル(b),ケニー・クラーク(d)と吹き込んだ、ピアノ・トリオですよ。
コマーシャリズムに陥ったスィング・ジャズ全盛の時代に、深夜のジャズ・クラブの閉店後にジャム・セッションを繰り広げて築いていった新たなジャズ・スタイルが、ビ・バップ。そこからは、アドリブ重視の姿勢が生まれ、それは今日まで継続されているジャズの王道である。恐らくは、この息吹が生まれる過程では、「力強さ」を感じさせる演奏スタイルが必要だったのでしょう。
この作品で品格すら漂わせているヘイグのピアノには、かつてビ・バップ時代に白人ながらも演奏家から高い支持を得ていた「力強さ」がしっかりと認められるね。クラークと、パウエルの「イン・パリス」での演奏が印象深いジルベールの演奏も手伝って、名盤と巷間言われるだけの内容。ヘイグの想像性に圧倒される「ホリーランド」が、白眉。