寺島靖国さん曰く“ミントのアル・ヘイグを手に入れるのは、吉永小百合のハートを射止めるより難しい”だったそうです。ピアノのアル・ヘイグは1940年代後半からチャーリー・パーカーのバンドで活躍し、白人ながらバップのスタイルをいち早くとり入れた人です。そんな彼が超マイナーレーベルに吹き込んだこのアルバムは、希少性故に幻の名盤と言われてました。何度か海賊盤で質の悪い盤が出されていたのですが、10年前に良い状態で発売され、“幻の”が取れて誰でも手に入れられるようになり、そして“名盤”という評判はどんどん強くなって行きました。
このアルバムの魅力の第一は哀愁に帯びた泣き節ですね。“ブラザー、ホエア・アー・ユー” “ユー・ドント・ノウ・ホワット・ラブ・イズ”の2曲が代表的な例です。泣かせようとしているのではなく、ヘイグが曲を良く解釈しその気持ちを演奏に出せているからでしょうね。もう一つの魅力は、魅惑的なアドリブ・フレーズを、凄いテクニックでスピード感を出して演奏していることです。“スリオ”“バグス・グルーヴ”がその曲です。これだけ揃っただけでも名盤の資格充分なのに、“サテン・ドール”では違う曲のフレーズを枕に使って、かつテーマはベースに弾かせるという、趣のある曲構成にしています。このような素晴らしいアル バムが10年以上もファンが手に出来なかったのは、なんとも残念でしたね。ちなみにこのアルバムのセンターレーベルにMINTと記されていることから、“ミントのヘイ グ”という通称で呼ばれていました。