2001年10月6日掲載
Junior Mance    The Shadow of your Smile
M&I原盤         1982年7月録音

 猫は耳の下から喉元辺りを撫でられると、実に気持良さそうですよね。

 SJの新年号に前年に発売されたジャズ作品を網羅した別冊が付いてくるのだが、それを見ていて気持良さそうな猫の姿が目に止まり、購入した作品です。

 ブックレットによれば、これは既発の2枚のLPを1枚のCDにしたものだとか。アルビン・クイーン(d)とマーティン・リヴェラ(b)とのトリオ作品の「グライディン・アンド・ストライディン」、リヴェラとのデュオ作品の「ザ・テンダー・タッチ」の2枚です。

 初リーダー作が代表作である場合が多いのがジャズ・ピアニストの定説だそうだが、マンスは正にその典型のお方。30歳になった1959年にヴァーヴに吹き込んだ「ジュニア」での、ファンキーな演奏が圧倒的でしたよね。その後ジャズランドやリヴァーサイドに好盤を立て続けに発表しましたが、全盛時代はここまでとううのが僕の感想でして、1960年代後半以降の彼には接しておりませんでした。

 猫のジャケで買ったこの作品、撫でられている猫のように心地よいものなおでしょうかね。

20011006

 録音の力強さから演奏も力強く感じるのだが、内容は数十年のキャリアから身についたフレーズの数々をダラダラと引っ張り出しているだけという印象でした。

 ブックレットに録音当時50代半ばのマンスに対して、「まだ50歳」と捉えるか「もう50歳」と考えるかとの記述がありますが、前半に並べられたピアノ・トリオでの僕の印象は後者でした。

 ところが、デュオでは「まだ50歳」でしたよ。往年のファンキーさを感じさせながら、奥深い感情が見事に表現されていました。トリオでの演奏ではクイーンのドラムの迫力にマンスの魂が吸い取られているようで、デュオではリヴェラのベースがマンスの魂を浮かび上がらせているようでした。

 タイトル曲の出来が飛びぬけている1枚。勿論デュオ演奏ですよ。