10年前に大ヒットした作品だそうである。アール・ジンダースは、エヴァンスが好んで取り上げた「elsa」「how my heart sings」の作者として有名な方だそうだ。そんなジンダースの作品集であるこの作品には、この2曲は含まれていないのだが、大ヒットしたからには良い曲ばかりなのであろう。
ピアノ・トリオなんであるが、問題なのは9曲中1曲しかジンダースはピアノを弾いておらず、残りはドン・ハースが演奏しております。調べてもその経歴が分からないハースのピアノ演奏と共に、ジンダースの曲が楽しみな1枚なのですが、不思議な点が一つ。
自費出版のような作品で、かつ話題盤の復刻となれば、すぐ売りきれるのがこの世界の通り相場。SJで取り上げられてから2ヶ月以上経ったユニオン渋谷店に、「奇跡の再プレス限定200枚」と書かれながら、どの作品よりも高く平積みされていました。ユニオン・SJ連合が騒ぐほど、一般ジャズ・ファンには興味を持たれなかった作品なのでしょうかね。
何故ジンダースが1曲しかピアノを弾かなかったかは、一聴瞭然。
ジンダースが作ったメロディは、どれも哀しげなもので、これがエヴァンスの手に掛かれば活き活きとするものになったのでしょう。
ハースはメロディを飾り無しに表現しており、このアルバムはジンダースの作品発表会と言った所か。この手のメロディが50分続くと、退屈な恋愛映画を見ているような気分になり、手元の新聞につい意識が移ってしまいますね。