MCAに買収されたインパルス!から1985年に発売された編集作品です。発売されたのは私がジャズを聴き始めて3年が経ち、コルトレーンを聴き込んで、ジャズについて生意気なことをいろいろと言っていた時期です。私は国内版CDで購入しましたが、金コーティングされたもので、4300円でした。もちろんCD1枚ものです。この作品への収録曲を、二つに分けて説明します。
まずはコルトレーンの圧巻ライブ、1961年ヴィレッジ・ヴァンガードでの演奏収録作品、第五弾であることです。1961年11月2日に演奏された次の2曲(テイク)が、この作品に収録された初めて世に出ました。
India
Spiritual
これで22テイク中19テイクが発売されたことになります。
もう一つはスタジオ録音の中から、脚光は浴びたとは言えないが素敵な演奏の5曲を収録している点です。
Soul Eyes
1962年6月19日録音 収録アルバム「(インパルス!の)コルトレーン」
Song Of The Underground Railroad
1961年5月23日録音 収録アルバム「アフリカ/ブラス vol.2」
Dear Lord 1965年5月26日録音
収録アルバム「トランジション」
Vilia
1963年3月6日録音 収録アルバム「ディフィニティヴ・ジャズ・シーン 3集」
Big Nick
1962年4月11日録音 収録アルバム「ディフィニティヴ・ジャズ・シーン 1集」
特に「Vilia」と「Big Nick」の2曲は、1960年代にインパルス!のオムニバス・アルバムに収録されて発売されていたものです。その後のまだまだLP時代にベスト物に収録されていたようですが、CDとして発売されたのは本作品が初となるようです。
発売当時には存在意義が大きかった本作品ですが、個々に収録された貴重な演奏がその後に別の形でCD化されていき、今では本作が語られることはありません。
各曲については「今日のコルトレーン」をご覧ください。
このアルバムの構成を決めたのは誰なのかは、クレジットを読んでもわかりませんでした。ヴィレッジ・ヴァンガードのライブ・レコーディングをプロデュースし、それから6年にわたってコルトレーンのレコーディングをプロデュースしたボブ・シールが、ライナーノーツを書いています。そこにはヴィレッジ・ヴァンガード録音4日間と、その後のアルバム化に向けての作業の様子が書かれています。そこには取り立てて新しい事実はありませんが、ボブ・シールにとってヴィレッジ・ヴァンガードがいかに重要な仕事、そして貴重な経験だったかが伝わってきます。
やはりこのアルバムは、ヴィレッジ・ヴァンガードでの未発表テイクがあるからこそのものなのでしょう。そしてオムニバス・アルバムに収録されていたスタジオ録音2曲と合わせて、発売当時に私が感じたこのアルバムの存在感は、私にとっては忘れられないものです。