2021年9月2日掲載
Jutta Hipp         At The Hickory House volume 1
Blue Note原盤    1956年4月録音

 私が縁がないなのかなと感じたミュージシャンの一人が、このユタ・ヒップさんです。私がジャズ聴き始めの頃の40年ほど前のこと、日本におけるブルー・ノートの販売権がキングから東芝EMIに移りました。東芝EMIは販売戦略を考え、1500番台を番号順にLPで発売するという思い切ったことを行いました。しかも初版はジャケットをビニール・コーティングしての発売でした。ジャズ聴き始めの私は毎月10枚発売される1500番台の作品を買っておりましたが、アルバイト学生が全て買うことは難しく、この「1515」と「1516」は後回しとしておりました。数週間してお金を握りしめてレコード店にいくも、ビニール・コーティングのジャケは店頭になく、ならば他の店でとしているうちに買いそびれてしまったのです。他にもこんな例は続いて、「私が縁がないなのかなと感じたミュージシャン」とユタさんはなってしまったのです。それとは相反してジャズ喫茶では相性が良かったお方ですので、そういう巡り合わせなのかなと考えていました。

 本作をCDで購入したのは数年前のことでした。アメリカに移住した直後のユタさんの、ピーター・インド(b)とエド・シングペン(d)とのライブ演奏です。

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 私にはジャズ喫茶で聴いてきた作品なので、A面の印象の作品であり、しかも冒頭の二曲で印象深い作品です。テンポ早く「Take Me In Your Arms」、落ち着いたテンポで「Dear Old Stockholm」での彼女ならではの郷愁の響きに心打たれたものです。そして東芝の1500番台順番発売でこの作品触れた多くの人も同様だったことでしょう。

 日本で人気者になった彼女ですが、何しろ聴ける音源といえばブルーノートの3枚、それにドイツ時代の幾つかのセッションだけです。しかしながら絶好調な時期の彼女、「女性版バド・パウエル」と呼ばれていた時期の作品だけなので、より一層に彼女への注目が集まったのかもしれません。