新譜コーナーで、或いはエサ箱でこの作品を手にした方は、アンソニー・ブラクストンのモンク集とすぐに認識し、ジャケを裏返せばカルテットのピアノはマル・ウォルドロンと知り、このアルバムを棚へ箱へ戻すことを躊躇したことでしょう。
ブラクストンのモンク集、これだけで存在価値がある本作品、ベースは Buell Neidlinger、ドラムスは Bill Osborne が参加しています。
もっとぶっ壊せよ、との感触で聴き進めていくと、主流寄りの演奏でモンクの珠玉のメロディに寄り添うアンソニー・ブラクストンにうっとりしていきます。彼の諸作を思い浮かべ、彼の経歴を改めてWikipediaで眺めると、40歳を過ぎたところでの本作となるのは、あり意味で彼にとって自然の流れなのでしょう。また1990年代になるとジャズのスタンダードの演奏に取り組んでいく彼にとっての、本作は転換点の一つだったのかもしれません。
ブラクストンのアルト・サックス、そしてウォルドロンのピアノが絡み合いながら輝きを発揮している「ブリリアント・コーナーズ」は、私の中では忘れられない演奏であります。