近年では数多くのイスラエル出身の有能なミュージシャンが世界のジャズシーンに登場してきていますが、その中でもオマー・アヴィタルは際立った存在です。彼はこの中の一部ではなく、その動きを先導してきたミュージシャンなのです。
Vincent Bessieresが書いたライナーノーツの初めに書かれている言葉ですが、まさに核心をついた表現です。アヴィタルはイスラエル出身ジャズマンの先頭にいるだけではなく、ジャズシーンの先頭にいると言えます。
Avishai Cohen(tp), Joel Frahm(ts), Yonathan Avishai(p), Daniel Freedman(d) という力強いメンバーで吹き込んだ本作品は、彼の代表作の一枚といえるものでしょう。
傷んだ心に優しい手を差し伸べてくれるかの曲と演奏に、アヴィタルの真骨頂があるのでしょう。力強さと柔軟さを兼ね備えるベース演奏は、アヴィタルの醍醐味と言えるのでしょう。グループを同じ山頂に引き連れて行く統率力は、彼の特筆すべき点でしょう。そんなことが詰まった作品です。
今回聴いた中では、地味目の存在かもしれませんが、「Avishkes」「Sabah El - Kheir (Good Morning)」と続く展開に聴き入りました。音楽が持つ優しい手にうっとりとしました。
ここでの演奏を聴けば、アヴィタルの重要メンバーの Third World Love の作品を思い浮かべます。メンバーを見てみれば、 Third World Love の四人にテナー・サックスのジョエル・フラームを加えての本作品なので、それも当然のことなのでしょう。
Vincent Bessieresの言葉に深く頷きながら、本作を聴き終えました。