数多くのリーダー作を発表したマッコイ・タイナーの初リーダー作品です。アート・デイヴィス(b)とエルヴィン・ジョーンズ(d)との、トリオでの演奏です。
このサイトの「コルトレーン特集」でお世話になっている「インパルス・レコード物語」では本作を取り上げていますので、そこから本作へのマッコイの言葉を紹介します。
「コルトレーンのカルテットでやっていたのと同じことはしたくない、という気持ちが色んな意味で動機になっているね。インパルスではジョンと一緒にモード・ジャズもやったし、色々やるのは楽しかったよ。そうした経験は、おれ自身の音楽の一部になっている。でも、もっと自分を表すものをやりたかったんだ。おれがやりたいと思っている音楽がどんなものなのか、もっとはっきり示せるようなやつをね。だからスタンダードな曲を選んだ。皆がよく知っている曲を」
録音が行われたのは1962年1月、その前年のマッコイといえば、ほぼ全てをコルトレーン・バンドでの活動に費やしていました。「アフリカ/ブラス」のスタジオ録音、ヴィレッジ・ヴァンガードでのライブ録音が、その活動の代表例です。
本作にはマッコイ作の4曲、スタンダードが2曲収録されています。
(掲載したジャケット写真は諸般の事情によりザラついた画質になっています)
ハード・バップ期の最後に差し掛かる時期の、ピアノ・トリオの佳作と言える作品でしょう。「コルトレーン・バンドの」ではないマッコイの、熱い想いが詰まった作品です。特に「There Is No Greater Love」の演奏は、この曲のピアノ・トリオとしての代表的演奏といえると思います。
エルヴィンのシンバル、特にブラシを楽しみながら聴くのも、本作の魅力の一つなのかも知れません。