あの兄弟は次男がいるから仲を保っている、こんな話を聞くことがたまにあります。三人以上の場合なのですが、人数が多い兄弟の場合、まとめる人間がいないと、そしてそこに介護や相続が絡むと、とんでもない人間関係になっていく例をいくつか見てきました。
さてコーエン三兄妹の作品を取り上げるのはこれで三枚目であり、私が知っている限りでは、今のところコーエン三兄妹名義での作品は、この三枚だけです。今でも三人での演奏活動は続いているので、仲の良さは相変わらずなのでしょう。
私は女性のアナットさんがいるから、ユヴァルとアヴィシャイとの三兄妹の仲が続いているのかと思います。おっとりの長男、少しとっぽい次男の二人だけですと、喧嘩が絶えない兄弟、そしてNYに進出後には顔も合わせないことになっていたでしょう。YouTubeでの三兄妹の演奏を見ますと、アナットさんに男二人が頼っているようで、それだからこそ仲が続いているのです。(これは全て私の妄想)
ソプラノの長男、トランペットの次男、そしてテナーとクラリネット、更にはバスクラも演奏している長女の演奏です。そこに、フレッド・ハーシュ(p)、ヨナタン・ブレイク(d)、クリスチャン・マクビー(b)が曲により参加しています。
アルバムにタイトルの意味は、(綱渡りの)ぴんと張った綱、またそこから難しい状況を指す言葉です。
この作品での演奏は、三管での演奏が主です。そしてそこには、緊張感が漂っています。1曲目の「Blueport」、そして2曲目の「Conversation #1」は三人だけの演奏であり、三管演奏での緊張感を堪能できる演奏です。三管の音の交差には、聴き入ってしまう凛とした雰囲気が漂っています。
また三管にドラムが加わっての「Black」では、この緊張感、スリル感が一層高まった演奏となっており、本作の聴き所かと感じました。他にもハーシュが憂いを加える演奏、マクビーが落ち着きを提供する曲もあり、楽しめる一枚となっています。
ジャケには三兄妹と思われる写真が、イラストの上に貼ってあります。アナットさんの写真は小さいものですが、存在感は一番あるかなと思いながら、本作を聴き終えました。