2021年4月10日掲載
McCoy Tyner            Enlightenment
Milestone原盤           1973年7月録音

 汗だくのマッコイの横顔がアップでのジャケットは、お洒落なジャズを楽しみたい、気軽なピアノ作品を聴いてみたい、そんな人達からの購入意欲を無くすものです。熱い魂の熱演を聴きたい、そんなジャズ好きだけが買ってくれれば良い、そんなジャケットです。

 本作品はモントレー・ジャズ・フェスティバルでのライブ作品で、1973年7月7日の演奏です。メンバーは、Azar Lawrence(ss, ts)、Joony Booth(b)、そして Alphonse Mouzon(d)との演奏です。

 アルバム名の意味は、「啓発」の意味で、これに The がついていれば「(18世紀ヨーロッパの)啓蒙(けいもう)主義(運動)」を指すそうです。

 LPならば2枚組の本作品中に、Part 1から3まである「Enlightenment Suite」、合計26分の演奏があります。恐らくはこの曲の演奏がこの作品の目玉なのでしょう。

20210410

 SNSの紹介で本作を聴きたくなり、購入した1枚にまとめられたCDのブックレットに、次のマッコイの言葉が掲載されています。

 I can truthfully say that music has a way of transcending most barriers between people throughout the world.(音楽は世界中の人々の間の障壁を乗り越えることができると、私は本当に思っています)

 この日のライブにでは、気迫のマッコイ、烈々にマッコイの姿があります。彼はコルトレーン・バンドのコルトレーンの姿を自分に置き換えて演奏しています。コルトレーンがピアノを弾いたらこうばるのではと、私は感じました。

 「Enlightenment Suite」は圧巻の26分であり、マッコイと共にサックスのローレンスの演奏もお見事。時には暴走かと思う場面もありますが、見方を変えればマッコイの意図のローレンスなりの解釈なのでしょう。ネット上のディスコグラフィー上では、このライブがマッコイとれローレンスの初共演となります。そしてそれから数年間、この二人は一緒に演奏活動を行いますが、この日の演奏からすれば当然のことでしょう。

 この作品を聴き終えると、先のマッコイの言葉が少しは分かる気がしました。