今やジャズ・ピアニストとして注目度がトップ・クラスであるシャイ・マエストロの、3枚目のリーダー作品です。Jorge Roeder(b) と Ziv Ravitz(d) との、トリオ演奏です。
私が中古で買った本盤は、P-Vineからの発売であり、封入日本語解説にシャイの語った言葉がありますので、ここに引用します。
「音を付け足しても、軸が揺らいだらダメだと思うんだ、シンプルなラインを完璧に一つの歌として、表現すべきだと僕は思っている。ポール・サイモンの曲はシンプルで、美しいから、すっと入ってくる。どんなジャンルでも、そんな魅力が欠けていると、音楽としてのパワーが生まれないよ」
10代の頃はテクノにはまってビートを作っていたというシャイの本作品は、スタジオ録音とライブ演奏が収録されています。
リズムのうねり、それに合わせ、時には対抗するメロディ。これが時に微風で、時には強風で展開していきます。
ライブ収録の「Elusive」が、この作品の象徴のように感じました。ヘブライ語で「とらえどころのない」との意味の曲名ですが、「裏話」、あるいは「真実」とのアルバム名の中で、人間の心の底を表現している演奏でした。
奥深さがあるピアノ・トリオ作品、聴くたびに違う姿を感じることでしょう。