「マッコイ・タイナーの作品で、コルトレーン・バンドでのように演奏しているのはありますか?」「よくされる質問だけど、無いよ」
私がジャズ聴き始めの時に、渋谷のジャズ盤専門店の店主と交わした会話です。コルトレーン・バンドでのマッコイ、聴きたい人が多いのでしょう。
2度目のペナン駐在から帰任してからですが、恐らくは2016年頃に、アマゾンで本作を購入しました。アマゾンのサイトに表示される「お薦め品」の中にこのマッコイ作品があり、コルトレーンの名前があるので、すぐに購入手続きとなりました。
1997年9月にインパルスがヴィレッジ・ヴァンガードを1週間借りて、コルトレーン企画ライブを行いました。マッコイ・タイナーは、ジョージ・ムラーツとアル・フォスターというメンバーで、初日に登場しました。それから4年後のコルトレーン生誕75周年に合わせて、本作が発売されました。収録曲はコルトレーン作が6曲、コルトレーンお馴染みのスタンダードが1曲です。
コルトレーン・バンドという中だからこそのマッコイのあの演奏だった訳ですから、それを他の環境で求める私には無理があるのでしょう。またマッコイ自身としても自分の世界を求める個我もあっての、その後の活動だったのでしょう。しかしコルトレーン時代から30年経ち、自分が輝いていた一時代に素直に向き合い、このコルトレーン企画の一夜に参加したのかなと、このライブ演奏を聴いて感じました。
「クレッセント」での内省を深めていく様子、「アフター・ザ・レイン」での自然美の表現、コルトレーン・バンド時代の演奏とは違いますが、マッコイの気持ちはあの時代に行っているのではと感じる、良い演奏でした。