1959年生まれの太田寛二は、10代後半からプロ活動を始めたピアニストで、現在でも積極的にライブを行い、新譜制作にも取り組んでいる方です。この太田の本作品は、長らくCD化というか再発を望まれていた作品です。
1990年代の日本ではピアノ・トリオが大人気となり、オリジナル盤市場でもコルトレーンはどんどん値を下げ、ピアノ・トリオはどんどん値を上げておりました。そのようなピアノ・トリオ人気の光景に私は渋谷のジャズ専門店で接していたのですが、そこではやはり本国アメリカ及びヨーロッパの作品がその対象でした。しかしながらこの太田さんのピアノ・トリオ作品については、手にしたい方々が多かったのです。
1981年に、太田まだ22歳の時に、本作は吹き込まれました。この時に新譜買いしなかった多くの人が本作に接することができたのは、2006年にディスク・ユニオンから発売された時でした。
小杉敏(b)と岡山和義(d)との録音です。
誰が言ったのかは知りませんが、日本のソニ・クラと太田さんは呼ばれていたとのことです。ソニ・クラに似ているのかは置いといて、聴く者の心にそっと、しかし鋭く入ってくるピアノを聴いていると、静かに本作が評判になっていたことが分かります。
「My Ideal」の輝きと優しさに酔いながら、太田さんはこの22歳の時にミュージシャン魂を全てこの作品にぶつけたのかなと強く感じました。
初リーダー作が代表作、そんなピアニストの代表例を言える作品です。