2018年10月1日掲載
Toshiko Akiyoshi      Carnegie Hall Concert
Sony原盤                   1991年9月20日録音

 横浜の関内からみなとみらいのエリアで有料会場8カ所と多くの無料会場で、毎年10月の二日間で横濱ジャズプロムナードが開催されます。有料会場1カ所で5つほどのプログラムが用意されており、多くのジャズファンがお目当てのステージを求めて各会場を行き来するというもので、今年で25周年となります。

 今から11年ほど前にみなとみらいに引っ越した私には、近所で行われているジャズ祭りであり、海外駐在での4年間を除いては、毎年楽しみに観に行っております。ジャズ・ライブ漬けの二日間を過ごして、出演者のCDを購入したこともあります。本日からこの「今日の1枚」で、5枚ほどそんな作品を取り上げて行きます。

 私にとっての穐吉敏子さんと言えば、次の3点が思い出します。先ずは日本人で海外で活躍したミュージシャンとして1枚だけその作品を購入しており、2009年1月19日にこのコーナーで取り上げました。次に思い出すのは、場外馬券売り場で大レースの馬券購入に野毛に行ったついでに立ち寄っていた、ジャズ喫茶「ちぐさ」で接した穐吉さんの話であります。最後に思い出すのはジャズ聴き始めの時期にチケットを頂いて、確かサンケイホールで観た彼女のコンサートであります。

 つまりは私にとって穐吉さんは、あまり関わりがなかったミュージシャンと言えるのですが、横濱ジャズプロムナードで接した80歳を超えた穐吉の演奏は実にパワフルなもの、そして繊細なものでした。そんな気持ちで彼女の作品を2枚購入しました。

 今日取り上げるのは1995年にNYの名門カーネギーホールで行われたコンサートを納めたものです。ビッグバンドを率いてのこのコンサートは、「音楽生活45周年・渡米生活35周年記念」として行われたものです。

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 ビッグバンドを維持するのは大変なことであるのは、時に伺う話です。穐吉さんは1970年代から長きに渡りビッグバンドを維持していたので、そのご苦労は大変だったと思うのと同時に、彼女のビッグバンドの人気ぶりが伺えます。

 1曲めは「Children Of The Universe」という穐吉さん作の曲なのですが、冒頭と最後に雅楽の味わいを入れています。日本から鼓奏者二人が参加しており、ピッコロを雅楽楽器のように使っております。穐吉さんほどでも和の要素を入れなければ名門ホールに来た客を納得させられないかと思ったのですが、何度が聴けば自然な流れに感じるようになり、これはこれでありなのかと感じました。

 気に入ったのは2曲めの穐吉さん作の「I Know Who Loves You」でした。アップテンポの演奏の中に柔らかいながら迫力あるホーンのアレンジが、先ずは素敵なもの。そして穐吉さんのピアノ・ソロは楽しみ溢れる演奏で、和かな彼女がそこにいました。ゲスト奏者のハバードの貫禄演奏もあり、聴きごたえある内容でした。曲名の「あなたを愛している人を知っているのよ」であることを思い出し、この人生経験豊かな女性の言葉と演奏を重ね合わせ、ニヤッとしている自分に気付き、この作品を聴き終えました。