本作がブラック・ジャズ最後の20枚目の作品となりますが、実は21枚目となるような作品が二つあります。一つ目は、このレーベル活動停止から15年以上経った2001年に突然発売された、今日の主役であるダグ・カーンの作品です。この作品についてP-Vineは再発しておらず、そこには権利関係の何かがあるのでしょう。そしてもう一つの21枚目は、先に取り上げたクリーヴランド・イートンの作品です。こちらにはBJQD/22という番号も用意されていたのですが、ブラック・ジャズ・レーベル閉鎖により陽の目を見なかったものです。
BJQD/21として発売された第20弾は、ダグ・カーンのブラック・ジャズ4枚目の作品です。例の小冊子から本作を紹介します。
実質的なブラック・ジャズ最後のリリースとなったダグ・カーンの4枚目のアルバム。成熟を迎えたカーンの音楽的志向がコンテンポラリーな魅力として結実、いずれの楽曲もがポピュラーな完成度を持つこの一枚は奇しくもブラック・ジャズ最大のヒット作となった。ダンス・ジャズ・クラシックスとして有名な「Mighty Mighty」「Higher Ground」はもちろんのこと、隆々たるエネルギーと力強い躍動感がみなぎる全てのトラックが普遍的な名演と呼ぶにふさわしい。4年にわたるブラック・ジャズの歩みを集大成する作品であるばかりでなく、スピリチュアル・ジャズの金字塔として永遠に語り継がれるべき傑作。
前3作で一緒だったジーンは、本作には加わっていません。そしてジーン抜きの本作は、ジャズチャートで35位に入ったということです。
ジーンに変えてコーラスを上手く使い、音楽の多様性を追い求め、かつ引き締まった演奏を行っており、多くの方に支持を受けことがよく理解できる、楽しい作品です。
ブラック・ジャズの作品20枚全てを二ヶ月に渡り取り上げてきました。レーベル主催者のジーン・ラッセルの想いは、自分の周りにいる能力あるミュージシャンに作品発表の機会を与えて行こうとのものでした。それは前半の作品を聴いていると、変にレーベルとしての特徴付けせずに、ここのミュージシャンの力を引き出す作品作りに繋がってる行ったと思います。そしてそこにある明るい音楽性は、素敵なものでした。ジャズというベースがあった上で、次の展開を目指す姿も良かったです。
その流れは後半にも続いたのですが、徐々にそれらがジャズの範疇から飛び出して行き、最後の方ではジャズの香りはなくなって行きました。そこには当時の黒人の若者に刺激を与えるものがあり、そこに有能なミュージシャンが自身の才能を注入していったと思います。
そんな意味合いでの結実が、このダグ・カーンの本作品だと言えます。そしてそれは、もはやジーン・ラッセルが考えていたものとは違ってきていたのではと思います。
小さなレーベルが消えるのは毎度のことで、真っ先に考えられるのは経営面でしょう。しかし商業的には成功した本作品が最後の作品であることを考えると、ジーンとしては有能な若手にチャンスをとの所期の目的を達成し、そんなミュージシャン達の活躍を別の形で応援して行こうとジーン・ラッセルは考えたでしょう。私はこれがブラック・ジャズ・レーベルに幕を下ろした理由だと想像して、20枚目を聴き終えました。