2018年8月3日掲載
Doug Carn              Infant Eyes
Black Jazz原盤        1971年録音

 このブラック・ジャズ箱ですが、ネット通販大手に中古品として出品されており、値段は何と100,000円であります。3倍以上に値上がりしています。1枚あたりでは5,000円であり、単品1枚の中古価格の倍ほどの値段です。従って、箱物とのプレミアムが付いているのと、単品では中古市場に出てこない作品も含まれているので、100,000円との値段になっているのでしょう。このネット通販大手は値段の上げ下げが頻繁に行われているのですが、この箱に関しては100,000円がこの一ヶ月は維持されています。必ず売れるとの自信があるのでしょう。

 BJ/3として発売された第3弾は、ダグ・カーンの作品です。例の小冊子から本作を紹介します。

 ブラック・ジャズが生んだ最大のヒーローが鍵盤奏者ダグ・カーンであり、その人気を支えたのはパートナーであるヴォーカリスト、ジーン・カーンであるのは疑う余地も無い。これは実に4枚ものアルバムをブラック・ジャズに残すことになったダグ・カーンの初登場作。コルトレーン畢生の名曲「承認」のヴォーカライズ・カヴァーを筆頭に、60年代モード・ジャズのカヴァーが占める中、特筆すべきはボビー・ハッチャーソン作の「Little B's Poem」。原曲にヴォーカルを加えたこのワルツ・ナンバーで見せるスピリチュアルと気高いばかりの美しさはまさに圧倒的。

 1948年生まれのダグ・カーンは、このブラック・ジャズの前にはサヴォイへの吹込みがありますが、ブラック・ジャズの後では第一線には登場してこない方です。3管を配した本作でダグは、ピアノ・電気ピアノ・オルガンを演奏しています。

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 晩年コルトレーンの世界といえばそれまでですが、ダグ・カーンのそれは明るい味わいで繰り広げられるものです。湿気がなくカラッとした世界が繰り広げられています。カヴァーでありながら、独自の世界で組曲のように演奏が進んで行きます。ジーン・カーンのヴォーカルが強い印象を与えますが、ダグ・カーンがこの世界を構築している様子は、随所に感じ取れます。しかしながら、終盤で「承認」のイントロがベースによって流れてくると、それまでの世界が崩れていくように感じました。この曲自体の出来に不満はありませんが、私は必要ないのではとの想いでした。

 「Infant」とはヨチヨチ歩きを始めるまでの赤ちゃんのことを指す言葉であります。またダグ・カーンが付けた詩も、そんな赤ちゃんから見た世界を表しています。ダグ・カーンの純粋な気持ちが、ブラック・ジャズ1作目にあるのかと、思った次第です。