2018年6月6日掲載
Masabumi Kikuchi          Piano Solo “Attached"
NEC Avenue原盤       1989年2月録音

 菊地雅章さんの「ススト」を持っています。ジャズを聴く前のこと、フュージョンやクロスオーバーの嵐には無関心でいた私ですが、恐らくは「ニュー・ミュージック・マガジン」を読んで興味を持ったのかも知れません。私はプログレ・ロックのドラマ性を感じ、何度も聴いた記憶があります。

 もう一つ菊地雅章さんに関わる思い出としては、「ススト」と同時期のことで、横浜駅西口の岡田屋にあったレコード店(多分すみや)でのものです。店員が常連客相手に、音楽知識を披露している場面でした。マイルス・スクールの面々も今はダメですな、とかそんな話で30分ほどのものでした。その時は詳しい人だなと感じながら、レコード店の店員さんは暇なのかなとも感じていました。

 私が語れる菊地雅章さんは、こんなことしかありません。愛称プーさんが9年ぶり録音した作品、ピアノ・ソロでの作品を今日は取り上げます。

20180606

 ピアノの響き、ピアノという楽器自体を確かめているような演奏です。その中で何かを感じた瞬間を、録音したのだと思いました。モンク作の「パノニカ」と菊池自作の「イエスター・ブルー」に、音楽の微笑みが舞い降りたものになっています。

 録音は2月から4月にかけての、長期に渡るもの。録音場所は Cracker-Jap Sound Studio とありますが、これは菊池所有のスタジオかも知れません。菊池の音楽活動の盟友だったギル・エヴァンの死を、このスタジオの中で菊池なりに過ごしていたのでしょう。

 誰かと同じような唸り声は何とかならなかったとも感じながら、静けさの闇の中に強烈な輝きの点をチラつかせている本盤を聞き終えました。