ここ10年程のCDという音楽パッケージ・メディアの売られ方、特に旧盤についてですが、2つの大きな流れがあります。一つは高音質を謳い文句にした新たな形式での販売や、豪華ブックレットをつけての販売であり、価格は高いものに設定されています。これと対局を成すもう一つ流れは、超廉価での販売であります。 例えば今日取り上げるモーガンのCDを私は30年前に3200円で購入したのですが、今や400円相当での販売価格になっています。
この二つの流れにパッケージ・メディアに長年親しんできた者としていろんな思いがありますが、その辺りは機会をみつけて書きたいと考えています。
さて私が持っている本盤の封入解説は、油井先生が書かれています。そこから少しばかり引用します。
1961年にJMのトランペッター席をハバードの譲ったモーガンは、長年のヘロインを断つべく故郷のフィラデルフィアに引っ込みました。しかしあまり効果がないままNYに戻り、2年振りに活動を再開させて吹き込んだのが、本作品です。この作品はヒットし、1965年にクライスラーがタイトル曲をCMで用いたことで、とんでもない大ヒットになりました。引用はここまで。
ジョー・ヘンダーソン,バリー・ハリス,ボブ・クランショー,そしてビリー・ヒギンズとの演奏です。
聴く早々に体でリズムを取りたくなるタイトル曲の存在が、この作品の柱でしょう。ソロ先発のモーガンは、ハリスとヒギンズの叩き出すリズムに乗りながら、まるで踊っているような演奏を聴かせてくれます。続くソロはヘンダーソン。こちらはリズム陣を鼓舞するかのような演奏であります。
モーガンはこの作品で、初めてヘンダーソンと共演しました。レナード・フェザー氏が書いたライナー・ノーツで、モーガンはヘンダーソンとの初共演について、次のように語っています。「私は一度もヘンダーソンと一緒に演奏したことはありませんでした。けれど彼が最初にブルーノートのためにレコーディングしたセッションを、私は聴いていました。そしてライオンが今回のレコーディングで誰と共演したいのか聞いてきた時、即座に思い浮かべたのがヘンダーソンのことでした。私は彼のサウンドを覚えていましたし、彼が他とは違ったアプローチの持ち主であることも知っていました」とのモーガンのコメントですが、演奏を聴くと、モーガンのこの想いはこの作品できちんと実を結んでおります。
この作品全5曲とも、モーガン作のものです。第2期モーガンの始まりと言っていい本作品は、自身の曲を演奏していくこれからのモーガンの姿を、見事に捉えた作品と言えます。