今日はドン・チェリーが1988年に吹き込んだ作品を紹介します。
メンバーは、ジェイムス・クレイ(ts),チャーリー・ヘイデン(b),そしてビリー・ヒギンズ(d)との、ピアノレス・カルテットであります。
この作品のプロデューサーはジョン・スナイダーであります。1970年台からアメリカでジャズ作品に真摯に取り組んだ名プロデューサーが久しぶりにA&Mに戻り、その1作目としてこのドン・チェリーの作品を製作しました。
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ドン・チェリーは独特のトランペット雰囲気を持ったお方で、それをコスミックなトランペットと表現する方もおられます。私はそれに加えてチェリーの魅力は、演奏の懐の深さだとおもいます。そのセッションの雰囲気を壊すことなく、しっかりと自分の世界を展開することだと感じております。
ジョン・スナイダーがA&M復帰1作目にチェリーのために用意した舞台は、オーソドックスなジャズであります。チェリーのオリジナル曲やコールマンの曲などが並んでいますが、メロディを大切にして、またそれに相応しいアドリブを展開しての演奏です。その中でもチェリーの世界をきっちりと築いているのは、流石であります。
最後にケチを付ける訳ではありませんが、スタンダード「ボディ・アンド・ソウル」について一言。ジェイムス・クレイのしっとりとした熱演が聴ける演奏なのですが、チェリーは登場せず。この曲こそこのアルバムを象徴する存在になるかと思うのですが、残念な気持ちでした。