2017年7月10日掲載
Donald Byrd             Byrd In Paris
Brunswick原盤          1958年10月録音

 1955年にプロ・デビューしたドナルド・バードは、生まれたばかりのいハード・バップの嵐の中でスター・トランペッターとなり、大活躍しておりました。そんな活躍の中、1958年には半年に及ぶ欧州ツアーを行い、パリのオランピア劇場で演奏されたものが、2枚に分かれて発売されました。

 しかしながら超マイナー・レーベルからの発売故、それを手にできた人は極僅かでした。1970年台半ばの幻盤ブームの中でも復刻されず、1980年代半ばの第二期幻盤ブームの際に、第1集のLPが復刻され、輸入盤屋の店頭に並び、ジャズ・ファンを熱狂させました。しかし復刻したのが怪しいところのせいかどうかは別にして、音質は悲しいものだったのです。

 それから1年経った1987年に、正規に版権を持っている仏ポリドールから復刻され、音質的不満が解消されたのでした。

 メンバーは、ボビー・ジェスパー,ウォルター・デイヴィス,ダグ・ワトキンス,そしてアート・テイラー、2枚組CDで聴いてみます。

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 半年間の欧州ツアーと言っても、このメンバーで常に一緒という訳ではなく、その時々で変わっていたことでしょう。時には現地ミュージシャンとの共演も多々あったと思います。

 この時期はキャバレ「シャ・キ・ベーシュ」に長期出演しておりました。その際に EUROPE NO.1 という放送局に「ジャズ好きな方々のために」という番組があり、またオランピア劇場では「ジャズの木曜日」という企画があり、この二つを合わせた形で、バードのクィンテットに出演要請があったのです。

 フランソワ・ポスティフ氏の解説からの引用ですが、そんなことからこの録音が存在したわけです。

 さてその内容を聴くと、このメンバーで1ヶ月は固定して「シャ・キ・ベーシュ」に出演していたのではと、感じました。それほどメンバーの息が合っている演奏なのです。5人それぞれに光りを当て、またバッキングにおいても一工夫ありと、素敵な演奏であります。またジャズ・ブームに湧いていたパリの観衆の興奮振りも伝わってきます。

 話かわりますが、ジャケで気になる点が一つあります。ポスティフ氏によればジャケ写は、サン・ジェルマン・デ・プレ修道院で、11月5日に撮影されたとのことです。フィガロ紙を広げているバードが写っている写真ですが、その新聞の新聞名横に「JAN」との大きな3文字が写っています。フランス語でこの3文字の場合、Janvier、1月を表すことで用いられるとのことなので、11月撮影ということを考えると不思議な気分です。

 トップ記事の文章から判断しようと思ったのですが「13世の戴冠式」というようなことしか分からず、このジャケ写の日付を特定できる情報までは得られませんでした。

 余談はここまで。熱気ある演奏と共に、バードがピアノとベースの3人で演奏している「スターダスト」、トランペッターとしての風格を感じるものでした。