2017年6月2日掲載
Terumasa Hino           Fuji
Victor原盤                   1972年3月録音

 この「今日の1枚」で取上げた日野皓正の作品は1枚しかなく、それはベテランの域に達した1989年録音のものでした。今日取り上げるのは、彼が若手バリバリで尖がっていた時期の作品です。

 私は1990年にCDでこの作品を購入しました。封入解説は油井正一先生が1980年に書いたものでありました。そこで先生は日野皓正について、「彼の全作品を聴きかえして驚いたことは、彼のアルバムが、それぞれ吹き込まれたときの時代感覚とジャズ状況を、実に素直に反映していることであった」と述べています。

 油井先生のご尽力で日野皓正グループは、1971年11月のベルリン・ジャズ祭に出演し、大絶賛を博したとのことです。その勢いで吹き込まれたのが、本作品となります。植松孝夫(ts),杉本喜代志(g),益田幹夫(el-p),池田芳夫(b),そして日野元彦(d)とのシクステットでの演奏です。4曲中3曲が日野皓正のオリジナルです。

 油井先生の解説によれば、1960年代後半まで日本のジャズ界では日本のミュージシャンのオリジナル作品は絶対に売れないと、言われていたとのこと。そのジンクスに真っ向から挑んだ、日野皓正の作品です。

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 この時代のフリー・ジャズの要素を、若き日本のジャズ・マンがしっかりと吸収し、力強く表現した1枚です。もし日野皓正をはじめこのメンバーがNYのロフト・ジャズにじっくりと腰を落ち着けて活動していれば、世界的な評価を得ていたことと感じました。タイトル曲の評判が高いですが、私は「Be And Now」の空中へ広がっていく演奏が、堪らなく好きです。

 良い作品は時代の古さなど感じさせないものと、改めて実感した名盤です。