録音当時はJoel Zelnik(p)23歳,Harold Slapin(b)18歳,Dave Rose(d)20歳という、若者3人でのピアノ・トリオ作品を、今日は取上げます。
3人とも「新・世界ジャズ人名辞典」に掲載されておらず、「ピアノ・トリオ1600」でも取上げられていない作品です。またこのレーベルは、この作品を発売するために作られたものとのことです。ジャズ好きの若者が自分たちの演奏を残したく、録音されたものなのでしょう。
数年前にCD化で私のような一般人も聴けるようになりましたが、それまではオリジナル盤取扱店で数年に一度登場し、6桁の価格ですぐに売り切れていた作品です。
ジャズを愛する若者が、自分にあるジャズ節を全てぶち込んだ初リーダー作の素晴らしさを、この「今日の1枚」では何度もコメントしてきました。そしてこの1枚もそんな作品です。独特のリズム感と美的フレーズが活きている1枚です。
さて8年前にディスク・ユニオンがこの作品を復刻させるにあたり、ゼルニックとコンタクトを取りました。その際に得られた彼の情報によると、立派な職業で忙しく働く傍ら、地元のレストランやバーで演奏を続けているようです。
私の想像では、この1枚に全てをぶつけた後に、他に考えていた職業につき、ジャズは趣味としていたのでしょう。趣味を仕事とすることで、好きなものが嫌いになっていくことは世の中に多々あり、そんな意味では好きなジャズのままでいられているゼルニックは幸せものと言えるでしょう。
もう少し彼の情報と思いネットで調べたところ、2010年に65歳になったゼルニックは、なんと2作目の作品を発表したとのことです。DIW傘下のレーベルからの発売です。ジャズを愛する人の演奏が聴けるのでしょうけど、私は何故だか手を伸ばす気になりません。こんな気持ち、分かる方が多いのでは。