既に人気ギタリストの地位を確立していたバレルが、大御所ホーキンスを迎えて吹き込んだ作品です。そしてテーマは、この年にジャズ界を席巻したボサノヴァであります。ピアノには、トミー・フラナガンが加わっております。
バレルの有名盤の中で、この作品は埋もれた存在であることは間違いありませんが、当時流行りのボサノヴァを取り入れながら、落ち着き充実した演奏を聴かせています。
ホーキンスのテナーは確かにいつもの音ですが、この作品で聴くと「俺のスロー・ナンバーでのサックスはいかすだろう」と心の中で言っている彼の姿が浮かんでくるようです。
ライナー・ノーツでロバート・レヴィンが紹介しているバレルがホーキンス(あだ名はビーン)に言った言葉が、この作品を物語っています。「さぁビーン、何か素敵な音楽を演奏しようじゃないか、素敵と思われる何かを」、この挨拶と、簡単な打ち合わせで、本当に素敵な作品に仕上がっています。
バレル愛好家でこの作品を愛聴している方が多いのではと、感じた1枚です。