トロンボーン奏者のマシュー・ジーと聞いても、多くのジャズ・ファンはピンとこないしょう。当然ながら私もそんな一人で、調べてみてグリフィンやルー・ドナルドソンの作品で吹いていた人なのかと、やっとのことで自分の持っている彼の演奏に気付くありさまです。ビッグ・バンド好きなら、エリントンやベイシーでの彼の演奏に触れているのでしょうが、ソロ演奏の場面を与えられるほどではなかったようです。
アーニー・ヘンリーとのセッションと、ドーハムとのセッションで構成されている作品です。
ライナー・ノーツはプロデューサーのキープニュース自ら書いていますが、その中で”最近のジャズ・マンは頭でっかちが多くなっている”というような意味合いのことを書いており、マシューについては、「痛烈にスイングするアルバム」として、しっかりとしたルーツを持った演奏であると評しております。
この言葉のようにスイングの楽しさを感じられる作品になっています。その中にあってスロー・バラッドの「Lover Man」でのトロンボーンの演奏は、この作品中で聴きものになっています。
確かにマシューのリーダー作品はこれ1枚あれば十分だと思いますが、この時代を生き抜いた一人のジャズ・マンの存在感を感じられる1枚になっています。