私にとってジャッキー・バイアードは個性を掴みにくいピアニストです。様々な表情を見せるピアニストと今は考えております。
さて本盤ですが、ベースはリチャード・デイビス,ドラムはアラン・ドウソンと、バイアードと馴染みある方々です。そして目玉はローランド・カークの参加であります。
バイアードとカークのレコーディングでの共演は、1965年のカーク作品「Rip, Rig And Panic」と、本盤だけになります。カークがいつもの色合いを出す中で、バイアードがどんな姿を見せるかが、この作品のポイントでしょう。
冒頭の「Parisian Thoroughare」では、最初こそブラウン=ローチよろしくのピアノの出だしを弾くバイアードですが、その後はカークと共にフリーキーな世界を見せています。そして後半のデイビスのベースが、この二人を食っており、興味深く聴ける内容です。
続く「Hazy Eve」では、ピアノとベースのデュオであり、優雅な空気の中で二人の掛け合いが楽しめます。
ゴスペルの「Shine On Me」では、愉快に楽しくピアノとカークのクラリネットが踊っています。
モンクの「Evidence」を全員で爆走しての快演としています。
続くのは「Memories Of You」で、バイアードとカークのデュオ。古き良き時代のアメリカの雰囲気で、いくつかの映画のシーンを思い出しました。
最後は「Teach Me Tonight」で、バイアードとカークがしっかりとジャズの伝統を踏まえているミュージシャンであることを実感できる内容になっています。
こうして聴き終えると、暴れ者カークを巧みに使いこなすバイアードの懐の大きさと、彼のピアニストとしてのユニークさを実感致します。バイアードの作品群の中で本作は「カークとの・・・」という位置づけで捉えられるのでしょうが、バイアードの本来の姿に触れられる作品だと、私は思いました。