2017年2月7日掲載
Clifford Jordan          Bearcat
Jazzland原盤              1961年12月録音

 先ずはプロレスのお話から。

 日本ではある騒動を経て、1970年代前半に全日本・新日本との2団体+国際との3団体が、日本プロレス界をけん引しておりました。私はこの頃から1980年代前半までの訳10年間、プロレスを愛しておりました。この期間の前半は日本人対外国人レスラーとの、シャープ兄弟から続く展開で盛り上がっていました。次のシリーズはどんな外国人レスラーが来るのだろうと、わくわくしていたものです。

 そんな中で1975年10月の新日本プロレスに、黒人レスラーのベアキャット・ライトが来日したそうです。43歳で峠をとっくに過ぎたレスラーでしたので話題にはならず、私も全く記憶しておりません。

 しかしこのレスラーは凄い選手で、1963年8月23日にフレッド・ブラッシーを破ってWWA世界ヘビー級王座を獲得した選手なのです。プロレス界における初の黒人世界チャンピオンとなったのですが、アメリカでの黒人への風当たりはまだまだ強く、結果としてベルトをすぐ失うことになりました。しかしながら実力は凄く、それはその後の活躍からも分かるものです。
 以上がウィキペディアでのベアキャット・ライトについての活動内容です。

 さてクリフォード・ジョーダンですが、ベアキャット・ライトとは友人とのことです。この作品が録音された1961年は、ベアキャットはボボ・ブラジルとタッグを組んでおり、プロレス界では知られた存在だったようです。どのような経緯でクリフォード・ジョーダンがベアキャットと知り合ったかは不明ですが、ジョーダンはベアキャットに曲を作り、それをタイトル名にしたアルバムが、今日取り上げる作品です。

 ジョーダンの盟友シダ―・ウォルトンが参加しているワン・ホーン作品です。

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 ジョーダンのサックスの響きの中にある、ジョーダンの感情の叫びが、聴く者の心を捉えます。憂いや郷愁のジョーダンに、心動かされます。オリジナルの「Dear Old Chicago」、トロンボーン奏者のトム・マッキントッシュという方の作なる「Malice Towards None」でのジョーダンが、そんな演奏になっています。

 そしてタイトル曲では、困難にめげず強く進めとの鼓舞が響き渡っております。

 さてそんな演奏を捧げられたベアキャット・ライトは、唯一の来日から7年後に、50歳で亡くなりました。一方ジョーダンは、1993年に亡くなりました。天国での演奏が、聴こえるようです。