2017年12月1日掲載
Air                        Air Raid
Whynot原盤          1976年7月録音

 日本のジャズレーベルの中でWhynotは、特筆すべきレーベルであります。悠雅彦氏が運営していたこのレーベルは、ロフトジャズに力を入れてレコード制作を行っていきました。1980年代になるとロフトジャズは正当な評価を受け始めましたが、その全盛期の1970年代は、その活動の拠点であるNYでさえ、その活動を作品に残す動きはありませんでした。そんなロフトジャズに注目をして作品を残したのは、ヨーロッパのレーベルであり、そして悠雅彦氏のレーベルでありました。

 AIRは、管楽器のヘンリー・スレッドギル,ベースのフレッド・ホプキンス,そしてパーカッションのスティーブ・マッコールで編成されたトリオでのグループです。この三人はシカゴ派であり、AACMの重要メンバーであります。この三人がAIRとして活動しNYを活動の場にし始めたのは、1975年のことでした。これ以前の活動となると、残念ながら資料は見つけられません。この1975年に何とカーネギー・ホールでコンサートを行い、一部の方々に注目されました。そしてそんな彼らにレコーディングの機会を与えたのが、悠雅彦氏でありました。デビュー作の「エアー」を発表したのに続けて2作目である本作品も発表され、これまた一部方々では評判となり、1976年のダウンビート誌国際批評家投票の「注目すべきコンボ」部門で3位にランクされました。当然ながらロフトシーンの中心となっていたこのエアーは、大いなる飛躍を遂げていきました。そんな時期の作品を、今日は紹介いたします。

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 1970年代のジャズ界はまさに混沌していた時代であり、幾つもの流れがありましたが、40年経った今でも輝いているのはロフトジャズと、時代に奔放されずにど真ん中ジャズを演奏していったハードバッパーだと、私は強く感じております。どちらもその当時には大きな注目は集めませんでしたが、やはり自分の信じる道を進んだ方々の演奏が、聴く価値があるものだったと言えるでしょう。

 一時期のフリーの嵐を冷静に受け止め、ジャズの伝統も懐に入れて、ジャズを新たな展開へもたらしていく演奏がここで聴くことができます。三位一体というありふれた表現ですが、ここでは三位一体の真の姿を聴くことができます。重厚なバラッド演奏もあれば、スピリチュアルな演奏、そしてフルートで素晴らしい世界を作っている演奏などが、光り輝いています。ベースとパーカッションの連携を土台にして、マルチリード奏者のスレッドギルの世界が響き渡る作品です。

 さてエアーは、この後に9枚の作品を発表していきます。メンバーの入れ替えはあるものの、スレッドギルの素晴らしい演奏が聴ける作品ばかりです。私がLPを聴ける環境になれば、それらの作品を、ここで紹介していきます。