2017年1月8日掲載
Kenny Drew          A Harry Warren Showcase   Judson原盤           1957年2月録音

 裸の女性が赤い傘をさし鹿と一緒に移るジャケ、先ずこの不思議さに目が止まってしまいます。この作品はケニー・ドリューが作曲家ハリー・ウォーレンの曲を演奏しているもので、ベースのウィルバー・ウエアとのデュオでの録音です。私の好きな「I Only Have Eyes For You」や「September In The Rain」等を取上げています。

 因みにドリューはこの年に、ハロルド・アーレンやジェローム・カーン,そしてリチャード・ロジャースの作品集も録音しています。

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 「The Boulevard Of Broken Dreams」、邦題は「夢破れし並木道」ですが、私はジャズ作品で接したのは本盤以外では記憶にありません。しかしながら、馴染み深いメロディに感じます。因みに日本ではザ・ピーナッツが歌ったそうですが、歌謡曲の中で聴いていたのかもしれません。

 話それますが、日本での音楽上での著作権裁判で有名なものに「ワン・レイニーナイト・イン・トーキョー事件」があります。1963年に鈴木道明が発表した曲が「夢破れし並木道」の著作権を侵害したとしての裁判です。最高裁までいき、著作権侵害には当たらないとの判決になりました。ウィキペディアによればこの判決で「偶然の暗合は著作権侵害にならない」「音楽作品における「剽窃」の要件が、楽理的な同一性と、依拠性の二点であること」が示されたそうです。

 本盤に話を戻しましょう。「The Boulevard Of Broken Dreams」でのドリューは、失恋の涙の女性の姿が浮かび上がってくる演奏で、素敵なものです。

 ただアルバム全体を聴いた感想は、このアルバムはアメリカの良家のメイン・ダイニングで流れることを想定したようなもの。名作曲家の作品をそのまま提示しただけの演奏と、感じました。

 またベースとのデュオですが、ピアノ・ソロと言っていいものです。バックにごく小音量でベースが存在するだけのもの。この点に関してドリューは、1970年代にスティープルチェイスでベースとのデュオの素敵な作品を発表しております。本盤でも少しはベースとのデュオを活かした演奏していれば、私の感想は大きく違ってきたのかなと思います。