2017年1月5日掲載
Art Pepper                       The Trip
Contemporary原盤           1976年9月録音

 15年振りの復帰作が評判となったペッパーが、その録音から1年経って吹き込んだ復帰2作目を、今日は取上げます。

 メンバーは、よく演奏を共にしていたジョージ・ケイブルス(p),そしてドラムにはエルヴィン・ジョーンズが起用されています。この二人とのレコーディングは、初めてだと思います。エルヴィンに関しては、レスター・ケーニッヒが今のペッパーに合うドラマーとして、考え抜いた起用だと思います。ベースはデヴィッド・ウイリアムスで、これはエルヴィンが連れてきたミュージュシャンでしょう。ペッパー自身、かなり気合を入れて臨んだレコーディングです。

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 レコードでいうA面の3曲の存在感が秀逸な作品です。

 タイトル曲は刑務所にいた1963年頃に書いた曲で、自由な世界に戻りたい気持ちで書いた曲とのことです。モードやコルトレーンへの傾倒が感じられる曲で、力強い演奏で深い表現をしています。

 続くのはジョン・ゴードン作の「A Song For Richard」です。深い祈りの場面に流れるようなメロディを、切なく美しくペッパーは吹いております。

 3曲目はウディ・ショウの有名曲「Sweet Love of Mine」です。メランコリックなメロディを軽快なリズムに乗せており、ひたすら歌いあげるペッパーの姿に圧倒されます。

 この3曲の演奏を素敵なものにしているのは、エルヴィンの存在も重要な要素です。レスター・ケーニッヒのプロデュース力の確かさ、また彼のペッパーにかけた思いが伝わってきます。

 ケーニッヒはこの翌年に亡くなりました。もしもペッパーが復帰できる状態に戻れるのが2年遅れていたら、彼が再びジャズ・ファンの前に輝くことができたのかとの思いになります。待っていてくれる人がいたことは、素敵なことですね。