「9月1日に私は50歳になる。古い言い習わしに”人生は40歳で始まる“というのがあるが、私にとっては人生は50歳からというほうが当っている。私は生きて50歳を超えられるとは思ってもいなかったし、ましてやこの歳で新しい人生のスタートできるなんて、自分でも信じられない。私のプレイは今が最高だと思う。精神的にも肉体的にも、これほど調子がいいのは子供の頃以来だ」、これは15年振りに作品を作り上げたペッパーがライナー・ノーツに書いたものです。
旧友たち、ハンプトン・ホース,チャーリー・ヘイデン,そしてシェリー・マンと演奏です。
俗に言う後期ペッパーの始まりの演奏です。演奏曲についても、ペッパーはライナー・ノーツで触れています。
マイナー・ブルースの「Ophelia」については、「1963年にサンクエンティン刑務所で書いた、女についての曲だ。女のようにきれいな曲になるはずだったが、男が女から時々冷たい仕打ちを受けるように、悲しい感じになってしまった。女は予想がつかないし、移り気なものだ」と書いています。感情を強烈にぶつける姿が、演奏にあります。
またスロー・ナンバーの「Lost Life」については、「サンクエンティンを出所したが、たった数カ月でまた戻って来てしまった。そして書いたのが、この曲だ。この曲名をつけたのは、10年以上も刑務所で過ごし、もう2度と世に出ていけそうにないとの気持ちだったからだ。自分の人生を取り戻す全てのチャンスを吹き飛ばしてしまったように感じていた。この曲を書いた時には、これをレコーディングする日が来ることは、夢にも思わなかった」としています。自分の愚かさへの嘆きが、静かな演奏の内側に燃え上がっています。
ライナー・ノーツには参加メンバーのコメントも掲載されています。ホースは「情熱は少しも衰えていなかった。実際のところもっと凄くなっているように感じた」、ヘイデンは「このアルバムで彼はベストのプレイをしている。素晴らしい、そして美しいプレイだ」、シェリーは「彼の中に以前よりもっと大きな力強さを感じた」と、ペッパーの演奏を評しています。それは、聴く者全員が頷くコメントであります。
最後にペッパーの言葉の続きを記します。
「いつもと違う吹き方をしたら、それは私がそう感じたからだし、もしファンキーな気持ちになったらファンキーに吹く。重要なのは、スイングすることと自分に正直になることなんだ」