2017年1月3日掲載
Art Pepper                     Intensity
Contemporary原盤         1960年11月録音

 タイトル名を辞書で引けば、強烈さ・激しさ・集中・感動の深さなどとのことです。日本語にし難い英単語の一つと言えるでしょう。

 ペッパーで語られることは2つあります。その演奏の創造性を歌心。もう一つは麻薬との関係です。昨日取上げた作品ではその歌心をベニー・カーターの曲で存分に披露してくれましたが、ペッパーは録音後すぐに麻薬で3回目の逮捕となったのです。拘留されているペッパーにケーニッヒは録音の機会を与え、知人等が保釈金を用意し、この録音が実現しました。

 ドロ・コーカー(p),ジミー・ボンド(b),そしてフランク・バトラー(d)とのカルテットで、スタンダードを演奏している作品です。

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 バラッドを1曲、「Come Rain or Come Shine」を演奏しています。1946年のミュージカル「セントルイス・ウーマン」のために書かれた曲です。「♪山のように高く、川のように深く愛するわ、降っても晴れても」「♪幸せも不幸せも分かち合い」「♪曇ってても晴れてても、お金がある時もない時もいつもあなたと一緒よ」のフレーズが続くこの曲は、サラ・ボーンの絶唱が有名です。サックスとなれば、ここでのペッパーの演奏が先ず上がると思います。映画で神父を前にしての結婚の契りの言葉の数々、ペッパーの演奏の隅々から感じ取れます。

 一見陽気に演奏されている「Too Close For Comfort」は、1958年のミュージカル「ミスター・ワンダフル」に使われて、有名になった曲です。ペッパーはこの曲を1957年のアラジンへの録音(2001/3/17掲載)で披露しておりました。その3年後の本盤でも取上げ、楽しさの中に情念を感じさせる演奏を行っています。

 この2曲だけでも、「強烈さ・激しさ・集中・深い感動」が伝わってきます。

 さて本盤の録音後、ペッパーは15年間という長い引退生活に入ります。麻薬のために、刑務所暮らしを繰り返し、また更正施設に入っておりました。その間、3回は社会に僅かな期間ですが顔を出し、演奏活動も行いました。その中には、コルトレーンに傾倒していく時期もあり、その模様は後年に私家盤(2006/5/21掲載)で世に出ました。