このCDは、1990年代後半に中古で買ったものと、記憶しております。紙ジャケ作品であり、そのジャケに写るラッキー・トンプソンは、何か寂しげな笑い顔に感じます。1940年代のパーカーとの活動などで、彼の名前は良く知っていても、その演奏はなかなか思い出せないもの。煙草ジャケぐらいのもの。
児山さんの解説を読んでみると、彼は1970年代前半から可哀相な生活を送っていたらしい。特に1990年代半ばはシアトルで、ホームレスのような生活を送っていたとか。何か複雑な気分になる話です。
さて1961年に吹き込まれた本作品は、パリでの録音。Martial Solal(p),Peter Trunk(b),Kenny Clake(d)との演奏です。
トンプソンにとって最初のパリは、実に居心地が良かったのでしょう。穏やかに過ごせたのでしょう。優しい感情がテナーやソプラノ・サックスから溢れております。トンプソン作のバラッド『warm inside』から、そんな彼の気持ちを十二分に感じ取れます。また共演者のさり気ない振りして主張の強い演奏も、トンプソンのサックスを引き立てています。
さて本録音は未発表となったまま30年以上経って、日の目を見たもの。録音当時に発表されていれば、人気作となったことでしょう。当時、37歳のトンプソン。ジャケに写る彼は、後年のものでしょう。波の激しい人生を送ったトンプソンを、穏やかな演奏と寂しげな笑顔のジャケから、感じ取れます。