2008年12月29日掲載
Bud Powell        The Genius of Bud Powell
Verve原盤          1950年7月録音

 まさか本人が「天才」とタイトルをつけた訳ではないでしょうが、兎も角天才パウエルの代表作の1枚が、これです。ヴァーヴ2枚目の作品で、1950年7月の録音では、レイ・ブラウンとバディ・リッチとのトリオ。1951年の録音では、ソロ。そんな2部構成の作品です。

 トリオでは『tea for two』と『hallelujah』の2曲だけなのですが、僕が持っている1987年発売のCDには、『tea for two』の別テイクが2曲収録されています。誰が言ったのかか忘れましたが、「tea for two の別テイクが聴けるなんて、長生きしてて良かった」という言葉が印象に残っております。

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 怒号のテクニックの『tea for two』には圧倒されますが、3連発には少々つらいものあり。「長生きしてて良かった」と言った方の境地は、これが世に出た時代からこの作品を愛していた方のみに、辿り着けるものなのでしょう。

 さてこの作品のメインは『tea for two』よりも、ソロでの8曲でしょう。その中での圧巻は、『The last time I saw Paris』でしょう。パリの思い出というより、パリへの憧れで胸はちきれんばかりの心の高ぶりが、ストレートに表された演奏です。しかしこの録音から8年後には、長きにわたってパリで生活するなどとは、思ってもいなかったのでしょう。