2008年12月27日掲載
Horace Silver          Silver's Blue
Epic原盤                  1956年7月録音

 どの世界でも人間同士の付き合いの中で、仲たがいはよくあるお話。ジャズの世界で言えば、ホレス・シルバーとアート・ブレーキーの仲たがいが有名でしょう。二人の共演は、1952年10月のBNへのシルバー・トリオから始まり、その後はJM中心に共演を重ね、最後は1956年5月のコロンビアへのJM録音で終止符が打たれたのです。

 最初は息が合ったのでしょうが、音楽活動を続けていく中での、意見のぶつかりが人間関係にひびを入れたのでしょう。有名な話なのであまり書きませんが、シルバーが実をとって、ブレーキーが名をとったでした。つまり、ブレーキーが新たなメンバーでJMの名前で活動を続け、シルバーがJMのメンバーを丸ごと引っこ抜いて活動を続けたのです。

 そのシルバーの活動の最初の作品が、今日取り上げる作品です。二日間のセッションで構成されており、共通しているメンバーは、ハンク・モブレーに、ダグ・ワトキンス。7月2日のセッションでは、ドナルド・バードとアート・テイラーが参加。7月19日のセッションへは、ジョー・ゴードンとケニー・クラークが参加しております。

20081227

 2008年10月のジャズ・プロムナードで、普段は全く縁のない猪俣猛さんのシクステットでの演奏を聴きました。その際に、リクエストが多い曲としてシルバーの『Song For My Father』を紹介していました。シルバーは、ピアニストや編曲家だけではなく、作曲家としても高い評価を得ている方なのです。

 決して独りよがりではなく、多くの聴く方や演る方からも愛されている曲を、数多く書いているかたなのです。そんな1曲が、冒頭に収録されているタイトル曲。ブルースの魂が全て注入しているかのような、ミディアム・テンポの曲と演奏です。ブレーキーが明るいファンキーさならば、シルバーは暗がりにタバコが似合うようなファンキー。出だしのシルバーのピアノからして、魅力満点。モブレー、そしてバードと続くソロも、聴き惚れてしまうもの。そして粘っこいワトキンスのソロは、シルバーとの相性がばっちり。こんな魅力が他の曲でも聴ける、素敵さ作品です。
 強いて我儘を言えば、ゴードンのペットの色合いが、浮き上がっていること。ゴードンの演奏はブレーキーの元でこそ光る演奏と言えるでしょう。