コルトレーン好きだけではなく、多くのジャズ・ファンにとってマッコイ・タイナーのピアノと言えば、5年間のコルトレーン時代が強い印象に残っていることでしょう。ではマッコイのリーダー作の決め手と言えば、人によってかなりばらけると思います。コルトレーン好きの僕にとっては、コルトレーン時代の演奏が聴けるマッコイ作品が無いだけに、マッコイのリーダー作と言われても、何をあげてよいのか悩みます。
今日取り上げる作品は、マッコイの代表作と言われる作品群の中の1枚です。ソニー・フォーチュン(as),カルヴィン・ヒル(b),そしてアル・ムザーン(d)との録音。マイルストーンに移籍したマッコイの、そこでの最初の作品です。5曲が収録されていますが、マッコイが琴を弾いているのが1曲、フルートとパーカッションを演奏しているのが1曲あります。
リズムや音階を異文化に求めていく行為は、1960年代からロックの世界でもジャズの世界でも、行われておりました。結果として異文化を消化しきれないで終わったものが多かったのですが、このマッコイの作品も同様の結果です。その中で異文化取組度が少なく、心の高揚を表現した演奏の『エボニー・クイーン』が、違和感なく聴けるものでした。全体として、ピアノの音色が電気的に変えられていたことが、違和感をさらに膨らませております。模索しているマッコイの記録と考えるべ作品でしょう。